オプションチェーンと気配値

オプションチェーンは、ある原資産について取引できるコールとプットを、通常は満期と権利行使価格ごとに整理した一覧である。各シリーズには、それぞれ固有の市場気配、取引状況、契約条件がある。チェーンにはIVやグリークスなどの計算値も表示されることがあるが、実際に取引された価格や、現在注文が提示されている価格とは区別する必要がある。

契約の特定

満期を選ぶと、チェーンは同じ日に終了するオプションに絞り込まれる。一般に、中央の権利行使価格の列を挟んでコールとプットが左右に並ぶ。ある気配値がどのシリーズに属するかは、原資産、オプションの種類、権利行使価格、満期、適用される契約条件によって特定される。別の権利行使価格や満期の価格は、同じ権利に対する別の気配値ではなく、異なる契約の価格である。

例えばSPYが$750なら、権利行使価格$775のコールは$775で買う権利、同じく$775のプットはその価格で売る権利を与える。プットは売却価格が現在の市場価格を上回るため、1株当たり$25のイン・ザ・マネーである。コールは購入価格が市場価格より高いため、アウト・オブ・ザ・マネーである。マネーネスが示すのは権利行使価格との関係であり、どちらかのオプションを利益を出して決済できるかどうかではない。

買い気配値・売り気配値・直近約定値

買い気配値は買い手の提示する表示価格のうち最も高いものであり、売り気配値、またはアスク・オファーは売り手の求める表示価格のうち最も低いものである。統合気配は対象となる複数市場の最良価格を示し、取引所別の気配はその市場の価格を示す。両者の価格差をビッド・アスク・スプレッドという。

残存期間45日、権利行使価格$775のSPYコールについて、仮に次のような気配が表示されているとする。プレミアムは1株当たり、数量は契約枚数で表示する。

項目表示値
買い気配値$8.30
売り気配値$8.70
直近約定値$9.10
買い気配数量8枚
売り気配数量3枚

スプレッドは1株当たり$0.40である。仲値は次の算術平均で求める。

仲値=8.30+8.702=$8.50\text{仲値}=\frac{8.30+8.70}{2}=\$8.50

表示されている売り注文が残っていれば$8.70で買い、買い注文が残っていれば$8.30で売れる可能性がある。仲値の$8.50は参照用の計算値であり、約定を約束するものではない。その価格の指値注文は、表示スプレッドの内側で売買の一致を求めるもので、未約定のまま残ることがある。

直近約定値が表すのは成立済みの取引であり、現在の買い気配や売り気配ではない。その後に市場が下落していれば、直近約定値$9.10が現在の売り気配値を上回っていても不思議ではない。約定の時刻情報は取引が行われた時点を示し、気配の時刻情報は表示注文の新しさを示す。遅延データや通常の取引時間外の観測値は、現在の約定可能価格ではなく、以前の市場を表している場合がある。

プレミアム・乗数・ドル建て費用

標準的な株式・ETFオプションは、通常1契約が100株を対象とする。したがって売り気配値$8.70では、1契約の購入費用は$870となる。プレミアム総額は次のように計算する。

プレミアム合計=1株当たりの価格×乗数×数量\text{プレミアム合計}=\text{1株当たりの価格}\times\text{乗数}\times\text{数量}

この契約を、変化していない買い気配値$8.30で売却すると、受取額は$830で、$40の損失が実現する。気配が動いていなくても、2つの約定価格の差からこの結果が生じる。ブローカーの手数料を含めれば損失はさらに増える。1株当たりでは小さく見える気配の差も、契約サイズと数量を掛けると重要な金額になり得る。

標準的な株式・ETFオプションは、権利行使時に現物の受渡しを行う。企業行動により、株数の変更や株式と現金の組み合わせなど、通常の株式パッケージとは受渡対象の異なる調整済み契約が生じることがある。乗数と受渡対象を決めるのは、チェーンの見た目だけではなく、該当する契約仕様である。

気配数量と流動性

売り気配数量3枚は、$8.70で提示されている表示数量である。それ以上を買うと、その数量を使い切り、より高い売り気配で約定することがある。また、新しい注文が市場に到達する前に表示注文が約定、変更、取消しされることもあり、価格と数量はいずれも変わり得る。

流動性は、価格を大きく譲歩せずに希望数量を取引できる度合いである。気配の有無だけではなく、ビッド・アスクの幅と市場の厚みに左右される。スプレッドが狭くても数量がごく少なければ、小口取引には対応できる一方、大口では不利な価格になる場合がある。また、仲値が表示されていても、その価格で取引できるか、できるとしてどれほどの数量かは分からない。

クロス気配とは、買い気配値が売り気配値を上回って表示される状態をいう。市場やデータ構成要素ごとに更新時刻が異なる場合や、一部の情報が古い場合に、データ表示上で生じることがある。そのため、同じ市場観測を表す価格かどうかを判断するには、情報源と時刻情報が重要である。表示だけでは、予定する取引で見かけ上の価格差を獲得できる証拠にはならない。

出来高と建玉残高

出来高は、新規建て、決済、ポジション移転を含め、その取引時間中に売買された契約数を数える。建玉残高は、清算後に未決済で残る契約数を数える。通常は取引ごとの更新ではなく、前営業日の処理結果が表示される。これらは成立済みの活動と既存ポジションを示すのに対し、気配数量は特定時点で提示されている注文を示す。

出来高や建玉残高が多くても、特定の注文が仲値で約定することや、最良気配に十分な数量があることは保証されない。予定する取引には、契約ごとの価格と市場の厚みを確認することが依然として重要である。

計算による指標と評価基準価格

オプションチェーンでは、市場気配と並んでモデル計算によるデータが表示されることが多い。インプライド・ボラティリティは、選択したプレミアムから価格評価モデルを用いて逆算する。グリークスは、そのモデル価値が原資産、時間、ボラティリティ、その他の入力値の変化にどれほど反応するかを示す。独立した取引の観測値ではなく、提供者が使う参照価格と仮定に依存する。

評価基準価格は、プラットフォームが未決済ポジションを評価する際に使う参照価格であり、仲値、直近約定値、理論価値などが用いられる。そこから得られる未実現損益は、実際の決済注文で実現できる金額と一致するとは限らない。また、セータを暦日1日当たりで示すか年当たりで示すかなど、提供者によって計算項目の単位が異なる場合もある。そのため適切に比較するには、表示上の規約も考慮する必要がある。