オプションの買いと売り

オプションの買いポジションは、コールまたはプットを購入し、その契約の行使権を保有するポジションである。オプションの売りポジションは、コールまたはプットを新規に売ることで成立し、売り手はプレミアムを受け取って対応する義務を負う。ロングとショート、すなわち買いと売りは契約のどちら側に立つかを表すのであって、必ずしもポジションに有利な原資産価格の方向を表すものではない。

新規建て取引と決済取引

新規買いは買いポジションを作り、同じ契約の売却による決済はそれを減らし、または終了させる。新規売りは売りポジションを作り、同じ契約の買戻しによる決済は、取引した数量について未決済の義務を解消する。新規建てか決済かという区分は、新たなエクスポージャーを作る取引と、既存のエクスポージャーを相殺する取引を区別する。

ポジション新規建て取引決済取引
コール買いまたはプット買い新規買い売却して決済
コール売りまたはプット売り新規売り買い戻して決済

決済取引は、原資産、種類、権利行使価格、満期、その他の契約条件を含め、対象のシリーズと一致しなければならない。売り契約2枚のうち1枚を買い戻せば、もう1枚は未決済で残る。別の権利行使価格のオプションを購入しても、当初の売りポジションは決済されない。リスクの一部を相殺し得る別のレッグが作られるだけである。当初の義務は、決済、割当、満期のいずれかまで存続する。

コール・プットと相場の方向

他の評価入力値を変えなければ、原資産価格の上昇はコールの価値を高め、プットの価値を下げる。コールが提供する固定購入価格がより有利になる一方、プットが提供する固定売却価格は不利になるためである。保有者にはオプション価値の上昇が有利に働く。売り手には、買戻し費用を減らす価値の低下が有利に働く。

ポジション契約上の権利または義務他の入力値が一定の場合に有利な株価の方向
コール買い権利行使価格で買う権利上昇
コール売り権利行使価格で売る義務下落
プット買い権利行使価格で売る権利下落
プット売り権利行使価格で買う義務上昇

こうした方向性の説明は、原資産が有利に動けば必ず取引利益が生じるという意味ではない。満期前には、時間的価値、IV、その他の価格評価入力値もプレミアムに影響する。それらは原資産の値動きの効果を強めることも、相殺することもある。

プレミアムの変化と損益

仮にSPYが$750で、残存期間45日、権利行使価格$725のプットが1株当たり$6.50で取引されているとする。100株を対象とする標準契約1枚は、買い手にとって$650の費用となり、売り手には$650のクレジットをもたらす。同じプレミアムを取引の反対側から見たものである。

その後、満期前にプットが1株当たり$2.50で取引されるようになった場合、買い手が売却して決済すると$250を受け取る。購入費用$650に対し、$400の損失が実現する。$6.50で新規売りし、$2.50で買い戻した売り手は、義務を解消するために$250を支払い、$400の利益を実現する。いずれの計算にも新規建てと決済の両プレミアムを含め、取引費用はネットの損益を悪化させる。

新規建て時の1株当たりプレミアムをpp、決済時の1株当たり価格をvv、契約数量をqq、乗数をMMとすると、次の式になる。

オプション買いの損益=qM(vp)\text{オプション買いの損益}=qM(v-p) オプション売りの損益=qM(pv)\text{オプション売りの損益}=qM(p-v)

新規建て価格と決済価格の差を1株当たりで求め、ポジションの規模を掛ける。標準的な株式・ETFオプションでは通常M=100M=100を使う。同一契約の枚数を2倍にすると、プレミアム総額とドル建て損益はいずれも2倍になるが、損益をゼロにする決済価格は変わらない。買いと売りの双方がv=pv=pで損益ゼロとなる。

プレミアムの損失リスクと担保

購入したオプションは無価値で満期を迎えることがあり、その場合はプレミアムの全額が損失になる。同じ結果で、売り手は最大のオプション利益としてプレミアムを得る。しかしプレミアムは売り手のリスクを同じように限定しない。義務の価値は、その額をはるかに上回り得る。アンカバード・コールには有限の最大損失がない。一方、株式・ETFのプット売りでは、原資産がゼロになると、1株当たりで権利行使価格からプレミアムを差し引いた額を失い得る。

ブローカーは、売りポジションの担保として現金や適格有価証券を求める場合がある。必要額は、当該ポジション、口座内の他のポジションとの相殺関係、適用される証拠金規則や独自規則によって異なる。市場環境が変化すると増えることもある。したがって担保は口座上の要件であり、最大の潜在損失を測る指標ではない。

組み合わせポジションのデビットとクレジット

デビットは取引で支払う金額、クレジットは受け取る金額である。複数レッグの取引では、各レッグの数量と乗数を反映してからプレミアムを合算する。得られるネット・デビットまたはネット・クレジットは、新規建て時のキャッシュフローを示すのであって、戦略全体のリスクや相場の方向性を示すものではない。

ブル・コール・スプレッドは、同じ原資産で、数量、契約サイズ、満期をそろえ、低い権利行使価格のコールを買い、高い権利行使価格のコールを売る。より価値の高い低い権利行使価格の購入費用が、高い権利行使価格の売却による受取額を上回るため、ネット・デビットとなる。満期時に両方の権利行使価格を上回る領域では、両コールのペイオフが同じ速さで増える。このときコール売りがコール買いの追加利益を相殺し、組み合わせ全体の利益に上限を設ける。

売買を逆にすると、新規建て時にクレジットを受け取るベア・コール・スプレッドとなる。両方の権利行使価格を上回ると、高い権利行使価格の買いコールが、低い権利行使価格の売りコールの追加損失を相殺し、満期時の損失を有限にする。リスクの上限を作るのは、この保護の存在と条件であって、クレジットの受取りだけではない。

権利行使と権利割当

行使するかどうかは、契約条件と適用手続に従って保有者が決める。米国の標準的な株式・ETFオプションはアメリカン型であり、早期行使を認める。また、条件を満たすイン・ザ・マネーの契約は、その日に顧客から新たな指示がなくても、満期時の手続により行使されることがある。

権利割当は、同じシリーズの未決済売りポジションに行使義務を配分するものである。売り手が制御するものではなく、当初の取引相手にも依存しない。現物決済の契約では、コールの割当は権利行使価格での株式売却を、プットの割当は同価格での株式購入を求める。

スプレッドの各レッグは別個の契約として存続する。売りレッグの割当によって、買いオプションが残ったまま株式ポジションが生じることがある。買いオプションには、その後も独自の決済取引または行使指示が必要である。オプションの保護が終了した後も保有する株式には、それ自体の以後の損益が生じる。