オプション価格の決まり方
オプションのプレミアムは、買い手が支払い、売り手が受け取るオプションの価格である。その価値は、オプションがもたらし得るペイオフ、残存期間、契約条件によって決まる。価格評価モデルは、原資産、ボラティリティ、金利、配当についての仮定から価値を推計する。ただし実際の取引は、市場で取引可能な価格で成立するのであり、必ずしもモデルの推計値で成立するわけではない。 1
主な評価入力値
原資産価格と権利行使価格
コールは権利行使価格で買う権利を、プットは売る権利を保有者に与える。他の評価入力値を一定とすると、株価の上昇はコールの価値を高め、プットの価値を下げる。株価と他の入力値を一定とした場合、権利行使価格が低いほど、行使で購入する1株当たりの支払額が少なくなるため、コールの価値は高くなる。権利行使価格が高いほど、行使で売却する1株当たりの受取額が多くなるため、プットの価値は高くなる。
反応の大きさは、株価が権利行使価格をどれほど上回るか、または下回るかというマネーネスによって異なる。ディープ・イン・ザ・マネーのコールは、一般にアウト・オブ・ザ・マネーのコールよりも株式に近い値動きをする。後者は、株価が権利行使価格を上回らなければ満期時のペイオフがゼロのままである。こうした変化する価格感応度を測るのが、デルタとガンマである。
時間とボラティリティ
時間は株価が変動し得る残りの期間を定め、ボラティリティはその変動の大きさを表す。ボラティリティが高いほど、標準的なコールとプットの価値はいずれも一般に高くなる。有利な結果ではより大きなペイオフが得られる可能性が広がり、不利な結果では保有者が行使しない自由を保てるためである。そのためアウト・オブ・ザ・マネーでも、オプションに価値が付くことがある。 2
時間的価値は通常、満期に向けて低下するが、残存期間が長ければ必ず価値が高いわけではない。他の条件が同一で満期が遅いアメリカン型オプションには、短期のオプションが持つ行使機会も含まれる。一方、ヨーロピアン型では唯一の行使日が先に延びる。金利が正の場合、権利行使価格での売却代金の受取りが遅れることにより、ディープ・イン・ザ・マネーのヨーロピアン型プットの価値が下がる場合がある。
これらの効果は同時に働くため、株価が小幅に上昇しても、ボラティリティ低下やタイムディケイの影響のほうが大きければ、コールの価値は下落し得る。同様に、株価が小幅に下落してもプットの価値が下落することがある。
金利と配当
金利が高くなると、将来の権利行使代金の現在価値が下がる。これは支払いを先送りできるコールの保有者には一般に有利となるが、プットの保有者が受け取る売却代金の価値を下げる。この比較では株価を一定としており、金利変化に株価自体がどう反応するかを予測しているわけではない。
配当はオプション保有者ではなく株主に支払われる。予想される配当は、それ以外の条件が同じで配当のない価格経路と比べ、将来の配当落ち後の株価を低くする。このため一般にコールの価値は低下し、プットの価値は上昇する。配当の日付と金額は早期行使にも影響し、特にイン・ザ・マネーで残存する時間的価値の小さいコールでは重要となる。 3
計算ツールとブローカーの表示が異なるのはなぜか
多くの場合、2つの数値は異なるものを測っている。モデル価値、ブローカーの評価基準価格、実際に約定した価格は、互いに置き換えられるものではない。計算ミスを疑う前に、価格の種類、契約、単位、評価時点、新規建てプレミアムを確認する必要がある。OICの価格評価モデルの解説が説明するように、数式が推計するのは理論価値であり、実際のプレミアムを決めるのは市場である。
同じ意味の価格を比較する
買い気配値は買い手の提示価格、売り気配値は売り手の提示価格である。両者の仲値は単なる平均値であり、成立済みの取引ではない。直近約定値は過去の約定を記録したもので、現在の市場を反映していない場合がある。気配の時刻と取引可能数量も重要であり、これらの項目はオプションの気配値ガイドで解説している。
オプションを1枚、1株当たり$8.70で購入したとする。その後の仮の気配が、買い気配値$8.30、売り気配値$8.70、直近約定値$9.10を示していれば、仲値は$8.50となる。100株の契約乗数を使うと、次のように比較できる。
| $8.70での購入との比較 | 費用控除前の計算 | 意味 |
|---|---|---|
| 決済売りが実際に$8.30で約定 | ($8.30 − $8.70) × 100 = −$40 | この仮定上の約定による実現損失 |
| ブローカーが未決済ポジションを$8.50で評価 | ($8.50 − $8.70) × 100 = −$20 | そのブローカーが仲値を使う場合の未実現損益の推計 |
| 表示が直近約定値$9.10を示す | 新たな売却は成立していない | 過去の取引では、自分の決済価格は確定しない |
これらは説明用の数値であり、リアルタイムの気配値ではない。ブローカーによって評価基準価格は異なり得るうえ、手数料やその他の費用によって損益も変わる。現在表示されている買い気配値であっても、その後に同価格で約定できる保証にはならない。
契約と単位をそろえる
原資産、コールかプットか、権利行使価格、満期、権利行使方式、数量、乗数を確認する。1株当たりプレミアムはポジション全体の価値ではない。費用控除前では、1株当たり$8.50は、100株を対象とする1契約で$850となる。他の商品や調整済み契約では、乗数や受渡条件が異なる場合がある。
仮定と評価時点をそろえる
同じ原資産価格、残存期間、IV、金利、配当で比較する。古い株価、異なる配当仮定、早期行使の扱いの違いなどによって、どちらの計算にも算術上の誤りがなくても差が生じ得る。
この計算ツールが使うのは入力された仮定であり、ブローカーのデータではない。ティッカーはシナリオのラベルで、気配値を読み込む機能ではない。すべてのレッグが1つの満期、ボラティリティ、金利、配当利回りを共有する一方、市場のIVは権利行使価格や満期によって異なり得る。評価は日単位で行う。当日満期の場合、モデル上の残存期間はゼロで、価値は本質的価値となり、日中の時間的価値の減衰は扱わない。モデルと単位については計算方法を参照。
新規建てプレミアムが何を表すか確認する
エントリー価格は、新規建て時の原資産価格であり、オプションに支払ったプレミアムではない。 計算ツールは、その価格と本日の日付で新規建てプレミアムをモデル計算する。エントリー価格、IV、金利、配当、契約の詳細を変更すると、プレミアムとポジションのサマリーが再計算される。時間表示の価格スライダーも、この同じ新規建て時の価格を変更する。
分析日が変更するのは株価グラフの評価日であり、新規建てプレミアムや本日時点のポジション・サマリーではない。株価表示ではその日付の原資産価格を変化させ、時間表示ではエントリー価格を固定して日付を変化させる。曲線上の点を読み取ることと、新規建て時の仮定を編集することは異なる。
実際の約定価格を入力する機能や、ブローカーからの取込み機能はない。プレミアムが購入価格と一致するまで仮定を調整しても、グラフがその取引の記録になるわけではない。実際の取引の損益を照合するには、新規建てと決済のプレミアム、数量、乗数、費用を用いる。未決済ポジションについては、どの評価基準価格を使っているかを明確にする。
IVを価格とモデルの前提と併せて読む
インプライド・ボラティリティは、他の入力値を固定したとき、選択したプレミアムに選択したモデルを一致させるボラティリティである。そのため買い気配値、仲値、売り気配値からは、異なるIVが得られ得る。時間、配当、権利行使の仮定も結果に影響する。インプライド・ボラティリティで説明するように、IVの数値はそれらの入力値と併せて読むことが重要である。
ヨーロピアン型とアメリカン型の価格評価モデル
ブラック–ショールズ–マートン・モデルは、満期時にのみ行使できるヨーロピアン型オプションを評価する。その仮定には、原資産価格の連続的な変化、一定のボラティリティと金利、取引摩擦のない市場などが含まれる。配当を考慮した式では、個別の配当支払いではなく、連続配当利回りによって分配を表す。 4
この評価は、株式の保有量を調整しながら借入れまたは貸付けを組み合わせ、オプションを複製することで導ける。モデルの仮定の下では、価格変化に応じて株式保有量を調整すると、オプションのペイオフを再現できる。その場合、複製ポートフォリオとオプションは同じ価値でなければならない。異なれば、その価格差から裁定機会が生じるためである。この考え方により、原資産の期待投資収益率を予測せずにオプション価格を決定できる。
アメリカン型オプションは早期行使も認める。二項ツリーは、残存期間を段階に分け、各段階で価格が上昇または下落する可能性を置いて価値を近似する。計算は満期時のペイオフから始め、ツリーを逆向きにたどる。各行使機会で、即時行使の価値と保有を継続する価値の割引額を比較し、大きいほうを採用する。これにより、行使権を最終日にしか使えないものとして扱うのではなく、その価値を明示的に評価する。 1
無配当株式のコールでは、取引摩擦がなく金利が非負という仮定の下で、早期行使による追加価値は生じない。オプションを保有し続ければ、残存する選択権を維持し、権利行使価格の支払いを先送りできるためである。したがって、この場合のアメリカン型とヨーロピアン型のモデル価値は等しい。配当のある株式のコールやイン・ザ・マネーのプットでは早期行使が有利になる場合がある。この計算ツールは、すべてのアメリカン型オプションにヨーロピアン型の式を適用するのではなく、この違いを考慮する。
ヨーロピアン型の価格評価式
現在の原資産価格を、権利行使価格を、年単位の残存期間をとする。年率ボラティリティは、連続複利金利は、連続配当利回りはである。ボラティリティや金利・利回りは小数で入力し、例えば20%のボラティリティはとする。、、、が正の場合、1株当たりのコール価値とプット価値は次のようになる。
ここでは標準正規分布の累積分布関数、すなわち標準正規変数が以下となる確率を表し、は自然対数である。この関数に入る引数は次のとおりである。
係数は権利行使価格による支払いを割り引き、は原資産価格の項を連続配当利回りに応じて調整する。とは、株価と権利行使価格の関係に、残存期間中の資金調達、配当、ボラティリティの効果を組み合わせたものである。の分母は、その関係を同じ期間についてモデルが想定する変動の大きさで尺度化する。の式では、このボラティリティの尺度をから差し引く。
原資産価格$750、権利行使価格$775、残存期間45日、ボラティリティ20%、金利4%、連続配当利回り1%のヨーロピアン型オプションでは、を用いると、モデル価値は1株当たりコール約$12.03、プット約$34.14となる。
満期時の価値は本質的価値に一致する。残存期間またはボラティリティがゼロの場合は、とに直接代入するのではなく、別途、極限として扱う必要がある。ボラティリティがゼロなら、モデル内の株価は確定的な経路をたどり、その結果得られるペイオフを割り引いて評価する。
モデルの限界
実際の配当は特定の日に支払われ、市場価格は不連続に跳ぶことがあり、ボラティリティも時間とともに変化する。一定のボラティリティや連続配当利回りは、これらを正確に再現するのではなく単純化したものである。有限の二項ツリーでは、行使判断を各時間ステップに限定するため、さらに近似が加わる。したがってモデルの出力は仮定を条件とする評価額であり、約定可能な気配値ではない。契約仕様、観測された気配値、使用した仮定と併せて解釈する必要がある。 4
権利行使や権利割当によって、この計算ツールのオプション単独の損益には含まれない株式ポジションや資金上の義務が生じ得る。ブローカーの証拠金や口座のリターンは計算しない。また、各オプション契約の権利行使と権利割当は、それぞれ別個に扱われる。