オプションのグリークス
株価が上がっても、買ったコールの価値が下がることはある。株価上昇はコールに有利に働くが、時間経過やインプライド・ボラティリティ(IV)の低下が、それ以上の価値を失わせる場合がある。グリークスは、他の入力値を一定として各入力値への反応を推計し、これらの効果を分けて考えるための指標である。局所的な感応度であり、次のオプション価格を決める固定された規則ではない。 1
金利と配当の仮定は変えず、暦日1日の間に株価が$750から$751へ上昇し、IVが20%から19%へ低下したとする。100株の契約乗数を持つ買い契約1枚について、以下の丸めた説明用の感応度を使う。各感応度は1株当たりで示す。
まず、株価の$1上昇を考える。デルタが0.46なら、他の入力値が変わらない場合、コール価値は1株当たり約$0.46、買い契約全体では$46増える。デルタは、この原資産価格への局所的な反応を測る。
ただし、この反応は値動きの途中で完全に一定ではない。ガンマは、株価に応じてデルタがどう変化するかを表す。ガンマが0.0075なら、株価の$1上昇によりコールのデルタは約0.46から0.4675に上がり、次の$1の値動きに対する感応度が少し大きくなる。後の推計では、ガンマによる調整でこの曲率を考慮する。
その間、コールの残存期間は1日短くなっている。セータは時間経過の効果を推計し、ここでは暦日1日当たりで示す。セータが1株当たり-$0.26なら、株価、ボラティリティ、その他の入力値を一定として、100株を対象とする買い契約1枚の価値は1日で$26下がると推計される。
IVの低下は、さらに価値を減らす要因となる。ベガは、IVが1パーセントポイント変化したときの感応度である。ベガが1株当たり$1.04なら、他の条件が同じ場合、IVが20%から21%へ上がると価値は1株当たり約$1.04、買い契約全体では$104増える。この例では逆に20%から19%へ下がるため、推計される寄与は負となる。ここで扱うのはパーセントポイントの変化であり、元のIVに対する比例的な変化率ではない。
小さな変化を組み合わせた近似
ガンマによる曲率の調整を含め、株価、時間、ボラティリティの効果を合算すると、次のようになる。
推計される下落額は、1株当たり約$0.84、100株を対象とする買い契約1枚で約$84である。時間経過とIV低下が、株価上昇の有利な効果を上回っている。このように、株価が不利な方向へ動かなくてもコールは値下がりし得る。デルタだけで説明できるのは、変化の一部にすぎない。
一般に、原資産価格のドル建て変化を、経過した暦日数を、IVの変化をパーセントポイント、金利の変化をパーセントポイントとすると、1株当たり価値の変化の局所近似は次のようになる。
ガンマの項は、デルタによる推計を曲率に応じて調整する。ローは、この例では変えていない金利の効果を表す。式は当初の感応度を用い、高次の効果や入力値同士の相互作用を省いている。完全な再評価ではなく近似であり、取引結果を保証するものでもない。大きな変化、特に複数の入力値が同時に動く場合には、当初のグリークスを変化全体へ引き延ばして使うのではなく、新しい入力値でオプションを再評価する必要がある。
株価への感応度が変わる理由
コールのデルタが正であることが、株価上昇が有利に働いた理由である。コール買いのデルタは通常0から1の間、プット買いは-1から0の間となる。デルタが-0.54のプットは、他の入力値を一定とすると、株価が$1上昇すれば1株当たり約$0.54値下がりし、$1下落すればほぼ同額値上がりする。ディープ・イン・ザ・マネーのオプションは一般に原資産に近い反応を示し、大きくアウト・オブ・ザ・マネーにあるオプションは小さな価格変化に対する反応が弱い。
コール買いとプット買いは通常、正のガンマを持つ。株価が上昇するとコールのデルタは高まり、プットの負のデルタはゼロに近づく。株価が下落すると、プットのデルタはより負になる。このような傾きの変化が、オプション価値と原資産価格の関係における曲率である。 2
オプション売りでは、このエクスポージャーの符号が逆になる。株価が上昇するとコール売りのデルタはより負になり、株価が下落するとプット売りのデルタはより正になる。いずれも、その後さらに不利な方向へ動くと、より大きな損失が生じ得る。
満期が近い権利行使価格付近では、株価の小さな変化によってオプションの感応度が急変し、ガンマが特に高くなる場合がある。イン・ザ・マネーまたはアウト・オブ・ザ・マネーの方向へ大きく離れると、通常はデルタが安定し、ガンマは低くなる。デルタは大きな価格変化を正確に示す指標でも、現実世界での正確な権利行使確率でもない。
時間とボラティリティがエクスポージャーを変える仕組み
この例の負のセータは、買いオプションによく見られる。有利なペイオフが生まれるまでの残り時間が減るためである。アット・ザ・マネーのオプションでは満期に向けて減価が加速することが多い一方、ディープ・イン・ザ・マネーやアウト・オブ・ザ・マネーでは異なるパターンをたどる場合がある。
セータが常に負になるわけではない。ヨーロピアン型プットは、行使による権利行使代金を受け取るまで満期を待たなければならない。金利が正なら、その受取日が近づくほど代金の現在価値は高くなる。残存する不確実性の小さいディープ・イン・ザ・マネーのプットでは、この資金の時間価値の効果が選択権の価値の減少を上回り、セータが正となる場合がある。 2
この例の正のベガも、標準的なコールとプットの買いによく見られる。高いボラティリティは、不利な値動きの後に行使を強いることなく、より大きなペイオフを得る可能性を広げる。ベガはアット・ザ・マネー付近や残存期間が長い場合に大きいことが多い。ボラティリティやマネーネスによって変化し、株価でペイオフが決まる満期にはゼロに近づく。
この計算ツールは日単位で期間を扱う。当日満期ではモデル上の残存期間がゼロとなり、価値は本質的価値となる。日中の時間的価値の減衰を予測するものではない。
金利はどこに影響するか
計算例では金利を固定したが、金利が変われば別の寄与が加わる。ローは、金利が1パーセントポイント変化したときの感応度を表す。コールのローが1株当たり$0.40なら、他の入力値を一定として金利が4%から5%へ上昇すると、プレミアムは約$0.40増えると推計される。
金利が高いほど、権利行使価格による支払いの現在価値は低くなる。これは将来支払う可能性があるコール保有者に通常有利に働く一方、将来受け取る可能性があるプット保有者には不利に働く。このためローは、コール買いでは通常正、プット買いでは通常負となる。長期契約ほど、その影響が大きくなる傾向がある。 3
ポジション全体のグリークス
同じ感応度は、規模と方向を反映すればポジション全体にも適用できる。各レッグの1株当たりグリークスに、契約乗数と符号付き数量を掛ける。買いレッグは正、売りレッグは負とし、最後に各レッグを合算する。
100株を対象とし、デルタがそれぞれ0.46のコールを2枚買うと、ポジション・デルタはとなる。他の入力値を固定した小幅な$1の株価上昇に対し、約$92の値上がりが見込まれる。これら2枚を新規売りする場合のデルタは-92である。同様に、売りレッグでは対応する買いオプションの他の感応度も符号が逆になる。
グリークスの相殺がそのまま続くとは限らない。ガンマが異なるレッグでは、株価が動くとデルタの相殺が崩れることがある。同様に、ベガの相殺が示すのは共通のIV変化への反応であり、権利行使価格ごとに異なるボラティリティ変化からの保護ではない。
この計算ツールのポジション全体のグリークスには、買い・売りの別、数量、乗数がすでに反映されている。再び掛けて換算してはならない。分析日によって株価グラフが変わっても、これらのグリークスは本日の日付とエントリー価格を使う。
数学的な定義と単位
1株当たりのオプション価値を、原資産価格をとすると、デルタは価格に関する価値の1階微分、ガンマは2階微分である。
これらの定義は、滑らかな価値曲線を前提とする。満期時のペイオフには権利行使価格で折れ曲がりがあり、その点では一意の傾きと有限のガンマは定義されない。
残存期間を年単位で測る場合、1年を365日とする表示規約での日次セータは次のとおりである。
負号は、1日が経過すると残存期間が減ることを表す。この表示用の除数は、計算ツールの価格計算例で用いる、1年を365.25日とした年換算期間とは別である。
年率ボラティリティと金利を小数で表す場合、それぞれに関する微分係数を100で割ることで、ベガとローを1パーセントポイント当たりで表示できる。