オプションのグリークス

グリークスは、オプションのモデル価値が価格評価入力値の変化にどれほど反応するかを測る指標である。原資産の値動き、時間経過、ボラティリティの変化など、それぞれ1つの変化要因を取り出し、他の入力値を一定として評価する。固定された性質ではなく局所的な変化率であり、入力値が変われば感応度も通常は変わる。

グリークスをポジションに適用する際は、単位が重要となる。1株当たりで示される感応度は、契約サイズと数量を掛けて、ポジション全体のドル建て影響額に換算する必要がある。売りポジションでは、対応する買いオプションのエクスポージャーの符号が逆になる。

デルタ

デルタは、原資産価格の小さな変化に対するオプション価値の反応を表す。株価が$750、コールのデルタが0.46の場合、他の入力値が変わらなければ、株価が$751に上昇するとコールの価値は1株当たり約$0.46増える。したがって100株を対象とする買い契約1枚では、約$46の値上がりとなる。

コール買いのデルタは通常0から1の間、プット買いは-1から0の間となる。デルタが-0.54のプットは、原資産が$1上昇すると1株当たり約$0.54値下がりし、$1下落するとほぼ同額値上がりする。ディープ・イン・ザ・マネーのオプションは一般に原資産に近い反応を示し、大きくアウト・オブ・ザ・マネーにあるオプションは小さな価格変化に対する反応が弱い。

デルタは局所的な価格感応度である。原資産の大きな値動きに対する正確な予測として用いると、価格が推移する途中でオプションの反応が変わることを無視してしまう。

ガンマ

ガンマは、原資産価格の小さな変化に対するデルタの変化を表す。この例のコールのガンマが0.0075なら、原資産が$1上昇すると、デルタは約0.46から0.4675へ上がる。したがって次の価格上昇に対する感応度は、出発点より大きくなる。

コール買いとプット買いは通常、正のガンマを持つ。原資産が上昇すると、コールのデルタは高まり、プットの負のデルタはゼロに近づく。原資産が下落するとプットのデルタはより負になり、その後の下落による値上がりが大きくなる。このようにガンマは、原資産価格とオプション価値の関係の曲率を表す。

オプション売りでは、このエクスポージャーの符号が逆になる。原資産が上昇するとコール売りのポジション・デルタはより負になり、原資産が下落するとプット売りの正のポジション・デルタは大きくなる。いずれも、ポジションに不利な値動きが続くと、反応が次第に大きくなる可能性がある。

満期付近では、ペイオフがほとんどない状態から、原資産に近い値動きをする状態への移行が、権利行使価格付近に集中する。この領域ではガンマが高くなり得る。イン・ザ・マネーまたはアウト・オブ・ザ・マネーの方向へ大きく離れると、通常はデルタが安定し、ガンマは低くなる。

セータ

セータは時間経過の影響を測り、通常は暦日1日当たりで表示される。セータが1株当たり-$0.26なら、原資産価格、ボラティリティ、その他の入力値が変わらない場合、100株を対象とする買い契約1枚の価値は1日で約$26下がると推計される。

買いオプションのセータは通常、負である。残存期間が短くなると、行使権がより有利になる機会が減るためである。アット・ザ・マネー付近では、満期に向けてタイムディケイが加速することが多い。ディープ・イン・ザ・マネーやアウト・オブ・ザ・マネーのオプションは、時間的価値がほとんど残っておらず、異なるパターンを示す場合がある。

ただし資金の時間価値によって、この通常の関係に例外が生じる。ヨーロピアン型プットは、満期まで行使による売却代金を受け取れない。金利が正なら、受取日が近づくほどその代金の現在価値は高くなる。残存する不確実性の小さいディープ・イン・ザ・マネーのプットでは、この効果が選択権の価値の減少を上回り、セータが正となることがある。これはヨーロピアン型プットの式の割引項から生じるものであり、買いオプションが時間とともに必ず価値を失うという一般則があるわけではない。

ベガ

ベガは、IVが20%から21%へ上昇するなど、1パーセントポイント変化したときのオプション価値の反応を表す。ベガが1株当たり$1.04なら、他の入力値が変わらない場合、その変化でプレミアムは1株当たり$1.04増えると推計される。100株を対象とする買い契約1枚では$104の増加となる。

標準的なコールとプットの買いは通常、正のベガを持つ。高いボラティリティは、不利な結果での行使を強いることなく、有利な結果の可能性の価値を高めるためである。ベガはアット・ザ・マネー付近や残存期間が長い場合に大きいことが多い。満期には最終的な原資産価格でペイオフが決まるため、ベガはゼロに近づく。また、その値はボラティリティやマネーネスの変化でも変わる。

ロー

ローは、金利が1パーセントポイント変化したときの感応度を表す。コールのローが1株当たり$0.40なら、他の入力値を一定として金利が4%から5%へ上昇すると、プレミアムは$0.40増えると推計される。

金利が高いほど、権利行使価格による支払いの現在価値は低くなる。これは将来支払う可能性があるコール保有者に通常有利に働く一方、プット保有者が将来受け取る代金の価値を下げる。このためローは、コール買いでは通常正、プット買いでは通常負となる。権利行使代金の受払いがより先になる長期契約ほど、その影響が大きくなる傾向がある。

ポジション全体のグリークス

ポジションの感応度は、オプションの表示グリークスに、乗数、数量、買い・売りの符号を組み合わせて求める。100株を対象とし、デルタがそれぞれ0.46のコールを2枚買うと、ポジション・デルタは92となる。そのため原資産が小幅に$1上昇した場合、約$92の利益が見込まれる。同じコールを新規に売る場合は、上昇が売りの負債価値を増やすため、ポジション・デルタは-92となる。

複数レッグのポジションのグリークスは、各レッグに符号と規模を反映した感応度の合計である。ある原資産価格でデルタがほぼ相殺されていても、各レッグのガンマが異なれば、値動きの後に相殺が弱まることがある。同様に、ベガの相殺が示すのは共通のIV変化への反応であり、権利行使価格ごとにIVの変化幅が異なる場合のエクスポージャーまで消すものではない。

数学的な定義と単位

1株当たりのオプション価値をVV、原資産価格をSSとすると、デルタは価格に関する価値の1階微分、ガンマは2階微分である。

Δ=VS,Γ=2VS2\Delta=\frac{\partial V}{\partial S},\qquad \Gamma=\frac{\partial^2V}{\partial S^2}

これらの式は、滑らかな価値曲線を表す。満期時のコールとプットのペイオフには権利行使価格で折れ曲がりがあり、その点では一意の傾きと有限のガンマは定義されない。満期前の感応度を、その折れ曲がり点での通常の微分係数として扱うべきではない。

残存期間TTを年単位で測る場合、1年を365日とする表示規約での日次セータは次のとおりである。

Θ=1365VT\Theta=-\frac{1}{365}\frac{\partial V}{\partial T}

負号は、暦時間が経過すると残存期間が減ることを表す。この表示規約は、個別の価格計算例に用いる年換算期間の基準とは区別しなければならない。後者では異なる日数基準を使う場合がある。

年率ボラティリティσ\sigmaと金利rrを小数で表す場合、それぞれに関する微分係数を100で割ることで、ベガとローを1パーセントポイント当たりで表示できる。

ベガ=1100Vσ,ρ=1100Vr\text{ベガ}=\frac{1}{100}\frac{\partial V}{\partial\sigma},\qquad \rho=\frac{1}{100}\frac{\partial V}{\partial r}

小さな変化を組み合わせた近似

原資産価格の変化をxx、経過した暦日数をhh、IVの変化をuuパーセントポイント、金利の変化をwwパーセントポイントとすると、局所近似は次のようになる。

Vの変化Δx+12Γx2+Θh+ベガu+ρwV\text{の変化}\approx \Delta x+\tfrac12\Gamma x^2+\Theta h+\text{ベガ}\,u+\rho w

ガンマの項は、原資産の値動きに伴う曲率を調整する。他の項は、指定した変化に当初の感応度を適用する。この近似は高次の効果や入力値同士の相互作用を省いているため、大きな変化では全体を再評価するほうが信頼性が高い。

上記の丸めたコール感応度の例を使い、金利と配当の仮定は変えず、1日で原資産が$1上昇すると同時にIVが20%から19%へ低下した場合を考える。

0.46+12(0.0075)(1)20.261.04$0.840.46+\tfrac12(0.0075)(1)^2-0.26-1.04\approx-\$0.84

この推計下落額は1株当たりであり、数量と契約乗数を掛けてポジション全体に換算する。この例では、時間経過とIV低下の影響が、原資産上昇の利益を上回る。1つの入力値の有利な変化だけでは、オプション価格全体の動きが決まらないことを示している。