ペイオフと損益分岐点

オプションのペイオフは、新規建て時のプレミアムを含める前の満期時の価値である。損益、略してP/Lは、支払った、または受け取ったプレミアムを含み、完全なネット計算では関連費用も含める。損益分岐点は、所定の損益がゼロになる原資産価格である。契約の比較、レッグの組み合わせ、満期時グラフの解釈には、これらの区別が必要となる。

ペイオフから損益への換算

コールは満期時に原資産価格が権利行使価格を上回ると正のペイオフを持ち、プットは下回ると正のペイオフを持つ。満期時の原資産価格をSTS_T、権利行使価格をKKとすると、1株当たりのコールのペイオフCTC_TとプットのペイオフPTP_Tは次のとおりである。

CT=max(STK,0)C_T=\max(S_T-K,0) PT=max(KST,0)P_T=\max(K-S_T,0)

最大値関数は、権利行使価格による有利な差額がない場合にゼロを選ぶ。現物決済の株式・ETFオプションでは、この金額は行使に伴う株式取引の経済的な有利さを測る。別途その額が現金で支払われるという意味ではない。一方、差金決済の契約では、所定の行使価値が金銭で支払われる。

買いオプションの損益は、その価値から新規建て時の1株当たりプレミアムppを差し引いたものである。売りオプションの損益は、受取プレミアムから義務の価値を差し引く。契約数量をqq、乗数をMMとすると、次のようになる。

オプション買いの損益=qM(オプション価値p)\text{オプション買いの損益}=qM(\text{オプション価値}-p) オプション売りの損益=qM(pオプション価値)\text{オプション売りの損益}=qM(p-\text{オプション価値})

満期時には、式の「オプション価値」は上記のペイオフとなる。標準契約1枚ならq=1q=1M=100M=100であり、1株当たり$2の利益は$200となる。式には支払または受取プレミアムを用いる。ブローカーの手数料はネットの損益を悪化させ、損益分岐点を動かす場合もある。

単一オプションの損益分岐点

1株当たり$8.50で購入した権利行使価格$775のコールは、満期時の原資産価格が$780ならペイオフが$5となり、1株当たり$3.50の損失が残る。$783.50ではペイオフが$8.50となり、プレミアムをちょうど回収する。$6.50で購入した権利行使価格$725のプットでは、対応する価格は$718.50であり、売却権による有利な差額が1株当たり$6.50となる。

新規建て時のプレミアムが正の場合、買いまたは売りの損益をゼロと置くと、次の式が得られる。

コールの損益分岐点=K+p\text{コールの損益分岐点}=K+p プットの損益分岐点=Kp\text{プットの損益分岐点}=K-p

同じプレミアムで新規建てした買いと売りは、損益の符号が互いに逆であるため、同じ損益分岐点を持つ。数量はドル建て損益を変えるが、これらの1株当たりの条件は変えない。計算上のプットの損益分岐点がゼロ未満であれば、株式・ETFで実現可能な価格範囲の外にある。

オプションのレッグを組み合わせた損益

複数レッグのポジションでは、構成要素の損益を合算する。仮にSPYが$750で、権利行使価格$750のコールを1株当たり$18.50で1枚買い、$775のコールを$8.50で1枚売るとする。両契約の残存期間は45日で、それぞれ100株を対象とする。受取プレミアムが購入プレミアムの一部を相殺し、1株当たり$10、合計$1,000のネット・デビットが残る。

満期時にSPYが$750以下なら、両コールのペイオフはゼロとなり、デビットの全額を失う。権利行使価格の間では、購入したコールだけに本質的価値がある。$775を超えると両方が本質的価値を持つが、売りコールが買いコールのペイオフの追加増加を相殺する。

満期時のSPY価格買いコールの1株当たりペイオフ売りコールの1株当たり義務額合計の1株当たり損益
$750$0$0-$10
$760$10$0$0
$770$20$0+$10
$775$25$0+$15
$800$50$25+$15

表の合計損益は、いずれもデビット$10を含む。例えばSPYが$800のとき、コールのネットのペイオフは$25だが、利益が$25という意味ではない。新規建て費用を差し引くと、利益は1株当たり$15となる。これがブル・コール・スプレッドの満期時の構造である。

価格帯とグラフの形状

各権利行使価格では、オプションのペイオフの傾きが変わる。このスプレッドの例では、ドル建ての合計損益は次のとおりである。

損益=100{10,ST750ST760,750<ST<77515,ST775\text{損益}=100 \begin{cases} -10, & S_T\leq750 \\ S_T-760, & 750<S_T<775 \\ 15, & S_T\geq775 \end{cases}

低い権利行使価格より下では、デビット$1,000の損失で一定となる。両権利行使価格の間では、$1上昇するごとに損益が$100改善し、中央の式は$760でゼロとなる。高い権利行使価格以上では、コールのペイオフ差は1株当たり$25で固定される。デビット$10を差し引くと、最大利益は$1,500となる。

権利行使価格の数が増えれば、価格帯の数も増える。標準的なコールとプットを同じ満期で組み合わせたポートフォリオでは、各価格帯の損益関数は直線となる。その関数をゼロとして解いた結果が損益分岐点となるのは、解が該当する価格帯の中にある場合だけである。複数の価格帯に解が存在することもあり、ゼロの水平線分があれば、その区間全体が損益分岐区間となる。例えばプレミアムゼロで取得したオプションは、ペイオフがゼロとなる領域全体で損益もゼロとなる。

ポジション全体の一般式

同じ原資産、同じ満期のオプションについて、レッグiiの1株当たりペイオフをIi(ST)I_i(S_T)、新規建てプレミアムをpip_i、数量をqiq_i、乗数をMiM_iとする。買いレッグにはsi=+1s_i=+1、売りレッグにはsi=1s_i=-1を割り当てる。合計損益は次の式になる。

ポジションの損益(ST)=isiqiMi[Ii(ST)pi]\text{ポジションの損益}(S_T)=\sum_i s_iq_iM_i\bigl[I_i(S_T)-p_i\bigr]

IiI_iは、そのレッグの権利行使価格で評価した、コールまたはプットの最大値関数によるペイオフである。売りオプションでは、符号によってペイオフとプレミアムの両方の扱いが逆になる。すべてのレッグの数量を同じ比率で増やすと、ドル建て損益もその比率で増える。レッグ間の数量比率を変えると、傾き、損益分岐点、最大損失が変わることがある。

最大利益と最大損失

水平でない直線の区間では、最大値と最小値は端点に現れる。したがって標準的な株式・ETFのコールとプットから成る固定ポートフォリオの有限な満期時の極値は、原資産価格ゼロと各権利行使価格で損益を計算し、さらに最高権利行使価格より上の領域を調べることで求められる。この方法は、区分線形のペイオフ式から直接導かれる。

最上部の価格帯では、プットのペイオフはなく、各コールは原資産が1単位上昇するごとに価値が1単位増える。数量、乗数、ポジションの符号を反映した後、コール買いのエクスポージャーが多ければ右上がりとなり、利益に上限はない。コール売りが多ければ右下がりとなり、損失に上限はない。買いと売りのコールのエクスポージャーが等しければ、上側の領域は水平となる。株式・ETFの価格範囲の下端は、価格ゼロである。

満期前の評価

満期前の決済損益には、その取引時点で利用できる、残存時間的価値を含むオプション価格を使う。そのためコール買いは、原資産が満期時の損益分岐点に達する前でも、利益を出して売却できる場合がある。早期に損益ゼロとなるための価格は、本質的価値だけでなく、残存期間、ボラティリティ、その他の評価入力値によって決まる。

満期が異なれば、評価期間の扱いも変える必要がある。最初のオプションが満期を迎えた時点でも、後のレッグには残存期間がある。満期を迎えるレッグのペイオフとともに、後のレッグの市場価値またはモデル評価額を含めなければならない。両レッグが最初の日に同時に満期を迎えるものとして扱うと、存続するオプションの価値を落とし、合計損益を誤って示すことになる。