オプションのペイオフと損益分岐点

ロング・コールのガイドにある権利行使価格$775のコールを、1株当たり$8.50で購入したとする。契約乗数100株の1契約の費用は$850で、費用控除前の満期時の損益分岐点は$783.50である。それでも、原資産がその価格に届く前に売却して利益を得られる場合がある。

満期前の売却なら$350の利益、満期まで保有すると$350の損失

満期前に原資産価格が$780となり、コールを1株当たり$12.00で売却したとする。受取額は$1,200なので、費用控除前の利益は$1,200 − $850 = $350となる。この想定売却価格は、権利行使価格$775を上回る分である1株当たり$5.00の本質的価値と、$7.00の追加的な価値から成る。

満期時には、この追加的な価値はなくなる。原資産価格が同じ$780でも、コールのペイオフは1株当たり$5、1契約では$500にすぎない。同じ新規建て費用$850を差し引くと、1株当たり$3.50、1契約では$350の損失となる。

状況1株当たりのオプション価値100株を対象とする1契約の損益
満期前に$12.00で決済売りする仮定売却プレミアム$12.00$350の利益
原資産価格$780で満期まで保有本質的価値$5.00$350の損失

両行で新規建て費用と原資産価格は同じである。変わるのは、オプションの決済時または満期時の価値である。満期時の損益分岐点$783.50は、本質的価値だけで$8.50に達し、プレミアムを回収できる価格を示す。利益を伴う売却をする前に、原資産が必ず到達しなければならない価格ではない。OICのロング・コールの解説でも、この満期前との違いを説明している。

売却時の利益はどの価格で決まるか

買ったオプションを同じ契約の売却で決済する場合、受取プレミアムから支払プレミアムを差し引く。プレミアムを1株当たりで表すと、次のようになる。

決済損益 = (売却プレミアム − 新規建てプレミアム) × 契約枚数 × 契約乗数 − 適用される費用。

上記の売却益$350は、想定した$12.00のプレミアムを実際に受け取ることを条件としている。実際の取引では、気配値や理論価値ではなく約定価格を使う。未決済ポジションを想定決済価格で評価した結果は未実現損益であり、売却が成立したわけではない。ここで使う100株の契約乗数は計算ツールと共通だが、すべての契約に共通ではない。契約サイズと受渡条件は商品や市場によって異なる。

利益のあるコールは権利行使すべきということか

売却はオプション・ポジションを閉じる取引である。一方、現物決済のコールを行使すると、権利行使価格で株式を購入するため、資金が必要となる。行使では残存する時間的価値を受け取れないため、利益を伴う売却と行使が同じ結果になるとは限らない。取引可能な売却価格、行使の結果、費用、契約条件を比較する必要がある。仕組みについてはOICの権利行使FAQを参照。

計算ツールの満期前の日付のグラフは何を示すか

グラフは、残存期間と選択した価格評価の仮定に基づいてオプションを評価する。上記の満期前売却の例と同じ理由で、損益ゼロの点は満期時の損益分岐点と異なる場合がある。満期前の価値は、まだ本質的価値だけとは限らないためである。ただしモデル価値は、約定可能な買い気配値や売り気配値ではない。

計算ツールはまた、実際の購入価格を保存するのではなく、新規建てプレミアムもモデル計算する。新規建て時の原資産価格であるエントリー価格、ボラティリティ、金利、配当利回り、契約の詳細を変更すると、そのプレミアムとポジションのサマリーが再計算される。分析日の変更は株価グラフの評価日だけを変更し、新規建てプレミアムと本日時点のサマリーは変えない。基準値と日付の規約については計算方法を参照。

ペイオフから損益への換算

この例では、関連する3つの指標を使っている。ペイオフは、新規建てプレミアムを含める前の満期時のオプション価値である。損益は支払った、または受け取ったプレミアムを含み、損益分岐点は所定の損益がゼロになる原資産価格である。完全なネット損益を求めるには、適用される費用も含める必要がある。

満期時の原資産価格をSTS_T、権利行使価格をKKとすると、1株当たりのコールのペイオフは権利行使価格を上回る額、プットのペイオフは下回る額である。いずれのペイオフもゼロ未満にはならない。

CT=max⁡(ST−K,0)C_T=\max(S_T-K,0) PT=max⁡(K−ST,0)P_T=\max(K-S_T,0)

現物決済の株式・ETFオプションでは、本質的価値は市場価格ではなく権利行使価格で株式を売買する経済的な有利さを測る。株式取引に加えて、その額が別途現金で支払われるという意味ではない。一方、差金決済の契約では、所定の行使価値が金銭で支払われる。 1

買いオプションの損益は、その価値から新規建てプレミアムを差し引いたものである。売りオプションではこれらの額が逆になり、受取プレミアムから義務の価値を差し引く。1株当たりプレミアムをpp、正の契約数量をqq、乗数をMMとすると、次のようになる。

オプション買いの損益=qM(オプション価値−p)\text{オプション買いの損益}=qM(\text{オプション価値}-p) オプション売りの損益=qM(p−オプション価値)\text{オプション売りの損益}=qM(p-\text{オプション価値})

満期時には、式の「オプション価値」に上記のペイオフ式を使う。100株を対象とする1契約ならq=1q=1、M=100M=100であり、1株当たり$2の利益は$200となる。これらの式と記事内の例は費用を除いている。手数料やその他の適用費用は純利益を減らし、損益分岐点を動かす場合もある。

単一オプションの損益分岐点

満期時の損益をゼロと置くと、正の新規建てプレミアムを回収する原資産価格を求められる。

コールの損益分岐点=K+p\text{コールの損益分岐点}=K+p プットの損益分岐点=K−p\text{プットの損益分岐点}=K-p

上記のコールでは、$775 + $8.50 = $783.50となる。権利行使価格$725のプットを$6.50で購入した場合、損益分岐点は$718.50である。その価格では、$725で売る権利による有利な差額が1株当たり$6.50となる。

同じプレミアムで新規建てした同一オプションの買いと売りは、損益の符号が互いに逆であるため、同じ損益分岐点を持つ。数量はドル建て損益を変えるが、その価格は変えない。計算上のプットの損益分岐点がゼロ未満であれば、株式・ETFで実現可能な価格範囲の外にある。 2 3

オプションのレッグを組み合わせた損益

スプレッドでは、各新規建てプレミアムを含めて、各レッグの損益を合算する。仮にSPYが$750で、権利行使価格$750のコールを1株当たり$18.50で1枚買い、$775のコールを$8.50で1枚売るとする。両契約の満期は45日後の同じ日で、契約乗数は100株である。売りが購入費用の一部を相殺し、1株当たり$10、合計$1,000のネット・デビットが残る。

満期時の合計損益は、買いコールのペイオフから、売りコールの義務額と新規建てデビット$10を差し引いたものとなる。

満期時のSPY価格買いコールの1株当たりペイオフ売りコールの1株当たり義務額合計の1株当たり損益
$750$0$0-$10
$760$10$0$0
$770$20$0+$10
$775$25$0+$15
$800$50$25+$15

$750以下では、両コールのペイオフがゼロとなり、デビットを失う。両権利行使価格の間では、買いコールだけに本質的価値がある。$775を超えると、売りコールが買いコールのペイオフの追加増加をすべて相殺する。

例えば$800では、1株当たりのネットのペイオフは$50 − $25 = $25である。デビット$10を差し引くと、利益は$25ではなく$15となる。これがブル・コール・スプレッドの満期時の構造である。 4

価格帯とグラフの形状

このスプレッドの3つの価格帯が、満期時グラフの折れ曲がりを説明する。各権利行使価格で、どのコールが本質的価値を持つかが変わり、傾きも変わる。原資産価格が非負の範囲では、ドル建ての合計損益は次のとおりである。

損益=100{−10,ST≤750ST−760,750<ST<77515,ST≥775\text{損益}=100 \begin{cases} -10, & S_T\leq750 \\ S_T-760, & 750<S_T<775 \\ 15, & S_T\geq775 \end{cases}

下側の水平な領域では、最大損失$1,000となる。両権利行使価格の間では、SPYが$1上昇するごとに損益が$100改善し、中央の式は損益分岐点$760でゼロとなる。$775以上ではペイオフ差が1株当たり$25で固定され、デビット控除後の上側の水平な領域では最大利益$1,500となる。

権利行使価格が多いポジションでは価格帯も増え得るが、同じ満期の標準的なコールとプットの損益は、各価格帯の中では直線となる。各価格帯の式をゼロとして解き、その価格帯と非負の価格範囲の両方に収まる解だけを残す。複数の価格帯に損益分岐点が存在することもある。ゼロの水平線分があれば、その区間全体が損益分岐区間となる。例えばプレミアムゼロで取得したオプションは、ペイオフがゼロとなる領域全体で損益もゼロとなる。

ポジション全体の一般式

同じ原資産、同じ満期のオプションについて、レッグiiの1株当たりペイオフをIi(ST)I_i(S_T)、新規建てプレミアムをpip_i、正の数量をqiq_i、乗数をMiM_iとする。買いレッグにはsi=+1s_i=+1、売りレッグにはsi=−1s_i=-1を割り当てる。

ポジションの損益(ST)=∑isiqiMi[Ii(ST)−pi]\text{ポジションの損益}(S_T)=\sum_i s_iq_iM_i\bigl[I_i(S_T)-p_i\bigr]

各IiI_iは、そのレッグの権利行使価格におけるコールまたはプットの、最大値関数によるペイオフである。符号はペイオフとプレミアムの両方に適用する。すべてのレッグの数量を同じ正の倍率で変えると、損益分岐点は変わらず、ドル建て損益が比例して変わる。レッグ間の数量比率を変えると、傾き、損益分岐点、最大損失が変わることがある。

この計算ツールではすべてのレッグが満期を共有し、株式レッグには対応していない。満期が異なる場合、最初のレッグが満期を迎えても後のオプションには残存期間があるため、本質的価値だけではポジション全体を表せない。このような異なる満期の組み合わせは、計算ツールの対象外である。

最大利益と最大損失

同じ満期の標準的な株式・ETFのコールとプットから成る固定ポートフォリオでは、原資産価格ゼロと各権利行使価格で損益を計算し、さらに最高権利行使価格より上の領域を調べる。直線の区間の最大値と最小値は端点に現れ、水平な区間では全体が同じ値となる。この確認によって有限な満期時の極値を求め、上側の価格領域で損益が無制限となるかどうかを判定できる。

最高権利行使価格より上では、プットのペイオフはない。各コールは原資産が1単位上昇するごとに価値が1単位増えるため、傾きは買い・売りの別、数量、乗数を反映したネットのコール・エクスポージャーによって決まる。コール買いが多ければ右上がりとなり、利益の可能性に上限はない。コール売りが多ければ右下がりとなり、損失の可能性に上限はない。両者が等しければその領域は水平となる。反対側では、株式・ETFの価格範囲の下端はゼロである。

これらのオプション満期時の上限・下限は、行使や割当による、その後の株式エクスポージャーや資金上の義務を含まない。各契約は別々に扱われ、売りレッグの割当を解消するために買いレッグが自動行使されるわけではない。

関連項目

参考文献

  1. Cboe「差金決済と現物受渡し」
  2. Options Industry Council「ロング・コール」
  3. Options Industry Council「ロング・プット」
  4. Options Industry Council「ブル・コール・スプレッド(コール・デビット・スプレッド)」
  5. Options Industry Council「ブラック–ショールズの公式」