ベア・プット・スプレッド

ベア・プット・スプレッドは、同じ原資産のプットを買い、それより低い権利行使価格のプットを売る戦略である。数量、契約サイズ、満期をそろえると、ネット・デビットで構築し、最大利益と最大損失が有限となるバーティカル・スプレッドになる。低い権利行使価格の売りは購入費用を減らす一方、その売りの権利行使価格より下で生じる追加の満期時利益を相殺する。

このポジションは、両権利行使価格の間で弱気のエクスポージャーを持つ。単独のプット買いとは異なり、両プットのペイオフ差が権利行使価格の幅に達すると、それ以上の下落による利益は増えなくなる。

構成と具体例

仮にSPYが$750で、残存期間45日のプットを使うとする。権利行使価格$750のプットを1株当たり$16で1枚買い、$725のプットを$6.50で1枚売ると、1株当たり$9.50のネット・デビットとなる。各レッグに100株を対象とする標準契約を1枚ずつ使えば、初期費用は$950である。低いプットの受取プレミアムが高いプットの費用を一部相殺するが、別個の購入義務も生む。

満期時のペイオフ

満期時にSPYが$750以上なら、両プットに本質的価値はなく、デビット$950の全額を失う。$750から$725の間では、売りプットのペイオフがまだゼロである一方、SPYの下落に伴い高い権利行使価格の買いプットの価値が増える。$1下落するごとに、スプレッドのペイオフは$100増加する。

$745では、買いプットのペイオフは1株当たり$5、合計$500となる。デビット$950を差し引くと、$450の損失が残る。1株当たりの本質的価値$9.50が新規建て費用を回収する$740.50で、ポジションの損益はゼロとなる。

$725では、高いプットのペイオフは1株当たり$25、低いプットはゼロである。それより下では両プットの本質的価値が同じ速さで増え、差額は$25で一定となる。したがってスプレッドの最大ペイオフは$2,500であり、デビット$950を差し引いた最大利益は$1,550、1株当たり$15.50となる。

低い権利行使価格の売りは、下落へのエクスポージャーの費用を抑える一方、十分に大きく下落した後の追加利益を手放す。この権利行使価格を変えると、受取クレジットと、売りのペイオフに相殺されずに買いプットが値上がりできる価格幅の両方が変わる。

満期前の価値

決済するときは、$750プットを売却し、$725プットを買い戻す。ネット受取額が、新規建て時の1株当たりデビット$9.50を超えれば利益となる。両プレミアムには時間的価値が含まれ得るため、SPYが両権利行使価格を下抜けた後でも、市場価格の差が$25未満にとどまることがある。

下落は通常、低いプットよりも高いプットの価値を大きく増やし、スプレッドに有利に働く。両方がディープ・イン・ザ・マネーになるにつれ反応が似通い、合計価値は最大の満期時ペイオフに近づく。そのため追加の下落による価格への影響は、ヘッジのないプットよりもスプレッドのほうが小さくなる。

時間の意味合いは価格帯によって異なる。SPYが$750を大きく上回る場合、残存期間が短くなると、利益につながる下落の機会が減る。$725を大きく下回る場合は、最終的なスプレッド価値を下げる反発の機会が減る。ボラティリティ変化も両プットに異なる影響を与える。低い権利行使価格のプットに集中したIV上昇は、売りの義務を増やし、有利な原資産下落の効果を一部相殺し得る。

権利行使・権利割当・約定

SPYプットは早期行使を認める。売りの$725プットに割当があると、100株を$725で購入する一方、買いの$750プットは売却権として残る。そのプットを行使して取得株式を売れば、新規建てデビットを考慮する前の$25の権利行使価格差が実現する。適切な市場価格で取引できれば、代わりに株式とプットを売却し、残存する時間的価値を回収することもできる。

満期時の価格が両権利行使価格の間なら、$750プットが行使される一方、$725プットは使われずに満期を迎えることがある。引き渡す株式を持たない保有者には、口座の許可に応じて株式の売り持ちが残る可能性がある。その売りポジションは独自にその後の上昇リスクを負い、解消には別途買戻しが必要となる。スプレッドの満期時の損失上限は、オプション終了後に残す株式の損失を限定しない。

複合注文は、両オプション・レッグを所定の1対1比率、ネット価格で決済できる。レッグを別々に取引すると、約定間の価格変化と、完成したスプレッドとは異なる暫定ポジションへのエクスポージャーが生じる。パッケージ約定は約定数量についてこの問題に対処するが、全数量の約定を保証せず、行使判断を一体化するものでもない。

ペイオフの計算式

高い買いの権利行使価格をKHK_H、低い売りの権利行使価格をKLK_L、1株当たりデビットをdd、満期時の原資産価格をSTS_Tとする。高いプットのペイオフを加え、低いプットのペイオフと新規建てデビットを差し引く。乗数MM、完全なスプレッドqq組では次の式になる。

損益=qM[max(KHST,0)max(KLST,0)d]\text{損益}=qM\bigl[\max(K_H-S_T,0)-\max(K_L-S_T,0)-d\bigr]

権利行使価格が正で、正のデビットが両者の幅より小さい場合、次のようになる。

最大損失=qMd\text{最大損失}=qMd 最大利益=qM(KHKLd)\text{最大利益}=qM(K_H-K_L-d) 損益分岐点=KHd\text{損益分岐点}=K_H-d

損益分岐点は両権利行使価格の間にあり、買いプットだけのペイオフでデビットを回収できる点となる。両方より下ではペイオフ差が権利行使価格の幅に等しく、両方より上ではゼロとなる。完全なスプレッドの組数を増減すれば、これらの価格帯を変えずにドル建て損益が比例して変わる。