満期前のデビット・スプレッドの価値

満期前は、2つのコールがともにイン・ザ・マネーでも、コール・デビット・スプレッドの利益が最大利益に届かないことがあります。売りコールに残る時間的価値が買いコールより大きければ、スプレッドの価値は権利行使価格の差を下回ります。利益を求めるには、そこからさらに新規建て時の正味支払額(デビット)を差し引きます。

スプレッドの価値と利益は別のもの

ブル・コール・スプレッドは、同じ原資産、満期、数量で、権利行使価格の低いコールを買い、高いコールを売る組み合わせです。1株あたりの価値は、次のように求めます。

スプレッドの価値=買いコールの価値−売りコールの価値\text{スプレッドの価値}=\text{買いコールの価値}-\text{売りコールの価値}

実際に手仕舞いする場合は、買いコールの売却で受け取る1株あたりの価格から、売りコールの買い戻しに支払う1株あたりの価格を差し引きます。その正味受取額から新規建て時の正味支払額を引き、契約乗数とスプレッドの組数を掛けると、ドル建ての利益が求められます。

満期時の原資産価格が高いほうの権利行使価格以上であれば、両コールの本源的価値の差は権利行使価格の差と一致します。これが最大ペイオフであり、コスト控除前の最大利益は、権利行使価格の差から新規建て時の正味支払額を引いた額です。 1

新規建て時の条件を固定した計算例

原資産価格が$100のときに、スプレッドを1組建てたとします。権利行使価格$100のコールを買い、$105のコールを売ります。どちらも満期は45暦日後で、契約乗数は100株です。年率ボラティリティ25%、連続複利の年利4%、配当利回りゼロを仮定します。基準となる価格は、ヨーロピアン型オプションを評価するブラック–ショールズ・モデルで算出し、残存期間は日数を365.25で割って年数に換算しています。取引コストは含みません。

新規建て時のモデル価値は、買いコールが約1株あたり$3.7423、売りコールが約$1.7737です。その差が1株あたり$1.9686の正味支払額となり、スプレッド1組では$196.86です。これらは理論上の基準価格であり、市場の気配値や実際の約定価格ではありません。前提についてはオプション価格の決まり方で解説しています。 2

丸める前の正味支払額を使うと、結果は次のとおりです。

項目スプレッド1組の結果
満期時の最大ペイオフ:$5 × 100$500.00
新規建て時のモデル上の正味支払額$196.86
満期時の最大利益$303.14
満期時の最大損失(コスト控除前)$196.86
満期時の原資産の損益分岐価格$101.9686

両コールがイン・ザ・マネーなのに、利益が$303.14に届かないのはなぜ?

次に、原資産価格が$107の場合を比較します。ボラティリティ、金利、配当の条件は変えず、どの行でも新規建て時の正味支払額を固定します。変えるのは満期までの残り日数だけです。

満期までの暦日数権利行使価格$100のコール価値(1株あたり)権利行使価格$105のコール価値(1株あたり)スプレッドの価値(1株あたり)スプレッド1組の損益
30$7.9558$4.3398$3.6160+$164.74
14$7.3332$3.3255$4.0077+$203.91
7$7.1089$2.7324$4.3765+$240.79
1$7.0110$2.0569$4.9540+$298.54
0:満期$7.0000$2.0000$5.0000+$303.14

各行は、残存期間ごとに条件を設定した独立した比較です。予想される価格推移でも、実際に手仕舞いできる気配値でもありません。損益はすべて、同じ丸め前の新規建て時の正味支払額を用いて計算しています。オプション価格は小数点以下4桁で表示していますが、スプレッドの価値とドル建ての合計額は、丸める前の価格から計算して最後に丸めています。

満期まで30日の時点では、買いコールの価値は、本源的価値$7と、約$0.9558の時間的価値(本源的価値を超える部分)からなります。売りコールの価値は、本源的価値$2と約$2.3398の時間的価値です。売りコール側に残る、より大きな時間的価値を買い戻す必要があるため、スプレッドの価値は本源的価値の差である$5より小さくなります。

(7+0.9558)−(2+2.3398)≈3.6160(7+0.9558)-(2+2.3398)\approx3.6160

満期になると、どちらのコールにも時間的価値は残りません。原資産価格が引き続き$107なら、本源的価値はそれぞれ$7と$2で、差額の$5がそのままペイオフになります。それ以前に原資産価格が両方の権利行使価格を上回っていても、満期までその状態が続く保証はありません。

待てば必ずスプレッドの利益は増える?

必ず増えるわけではありません。満期時の原資産価格が$102になった場合、$100コールのペイオフは1株あたり$2、$105コールはゼロです。最初の正味支払額を差し引くと、満期時の利益は$3.14にとどまります。満期時の価格が$100以下なら、コスト控除前で正味支払額の$196.86を全額失います。

原資産価格やインプライド・ボラティリティ、実際に手仕舞いできる価格の変化が、時間経過の影響を上回ることがあります。また、各レッグが同じように反応するとは限りません。利益目標を立てる際も、基準となる額を取り違えないことが大切です。「最大利益の50%」と「権利行使価格の差の50%」は異なります。オプションの利益とリターンの違いで、この違いを解説しています。

アメリカン型の株式・ETFオプションでは、権利行使とその割当て(アサインメント)も考慮する必要があります。売りコールにアサインメントが発生しても、買いコールが自動的に権利行使されるわけではありません。各オプションは別々の契約のままであり、その結果として株式ポジションが生じると、この満期時ペイオフの例では扱っていない資金需要や価格変動リスクが生じることがあります。 3

計算ツールでシナリオを確認する

オプション計算ツールで、原資産のエントリー価格を$100に設定し、同じ満期の$100コールを1契約買い、$105コールを1契約売ります。インプライド・ボラティリティを25%、無リスク金利を4%、配当利回りをゼロにします。45暦日後の満期日を選択できれば、基準例の残存期間と一致します。その日を選べない場合は、近い平日を選んでください。その場合、新規建て時の価値も基準例とは異なります。日付選択機能は、取引所の休場日や上場契約の満期日を示すカレンダーではありません。

「株価」ビューで分析日を動かし、エントリー価格は$100のまま、曲線の$107に対応する値を読み取ります。分析日を変更しても、変わるのはグラフであり、新規建て時のプレミアムや今日時点のポジション概要は変わりません。エントリー価格を$107に変更すると、新規建ての基準そのものが変わります。「満期までの時間」ビューの曲線は、エントリー価格を固定して計算されます。ただし、そのビューの価格スライダーは新規建て時の価格入力を変更するため、スライダーを動かすと新規建て時のプレミアムも再計算されます。

計算ツールではアメリカン型の契約を扱いますが、この例のように配当がなく、金利が非負のコールには、ヨーロピアン型の計算結果を使います。評価に用いる残存期間は1日単位で扱います。満期当日はモデル上の残存期間がゼロとなり、オプションを本源的価値で評価します。モデルは日中の時間経過による価値の減少を表現しません。数値計算の精度やグラフの補間により、表示にわずかな差が生じることがあります。詳しくは計算方法をご覧ください。

ここで扱うのはモデル上のシナリオです。ティッカーは識別用のラベルにすぎず、リアルタイムの気配値や実際の約定価格を入力する機能はありません。新規建て時の前提を変更すると、その時点のプレミアムが再計算され、ポジション概要も更新されます。実際の取引では、約定したプレミアム、正しい契約乗数、数量、コストを使って、別途損益を計算してください。

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参考文献

  1. Options Industry Council:ブル・コール・スプレッド(コール・デビット・スプレッド)
  2. Martin Haugh(コロンビア大学):ブラック–ショールズ・モデル、第1節および第1.2節
  3. Options Industry Council:オプションのアサインメント